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<試乗記>フィアット・アバルト プント エヴォ

アバルトらしいスポーティな走り

 フィアットにも「プント・エヴォ」はあるが、今回試乗したのは、サソリのエンブレムが付いた「アバルト・プント・エヴォ」のほうだ。フィアットと違いボディは3ドアで、トランスミッションは6速MTになる。ハンドルの位置も左だ。1・4リッター4気筒SOHCエンジンはフィアットと同じだが、アバルトにはターボチャージャーが装着され163psのパワーと23・5kg‐mのトルクを発生。NAに対し、86psと11・8kg‐mも増強している。

 左ハンドルのMT車ということで乗る前は一瞬たじろいだが、ボディはコンパクトなので、狭い道でのすれ違いも大丈夫そうだ。MTのクラッチペダルは戦闘的なルックスとは正反対に軽く、しかもアクセルペダルに軽く足を乗せるだけで簡単にミートする。これならエンストの心配もない。しかも生粋のMT乗りからすれば鼻で笑いたくなるヒルホールドシステムまで備わるので、坂道発進も楽勝だ。

 シフトレバー奥にはエンジンのトルク特性を変えられるTTC(トルク・トランスファー・コントロール)スイッチが備わる。アルファのdnaスイッチと機構的には同じだが、プントの場合はN(ノーマル)とS(スポーツ)の2段階切り替えとなる。Nで走ると、メーター内の液晶画面にシフトアップインジケーターが点灯。燃費走行を促すためか、かなり早めのシフトアップを要求する。ドライバーの感覚とはかなりの隔たりがあるようだ。またトルクの出方ももっさりしたものになるので、ドライバーにとってはストレスが溜まるだけ。

 アバルトらしい走りをするには、やはりSモードを選んだほうが正解だ。アクセル操作に対するエンジンレスポンスは劇的に変わる。炭酸飲料に例えれば、Nモードが気の抜けた状態だとすれば、Sモードは炭酸の含有量を高めたストロングタイプ。まさに目も頭もバチッと冴える加速が味わえる。アクセルをガンガン踏んでいると液晶画面に表示するターボチャージャーの過給を示すバーグラフが、すごい勢いで駆け上がるサマを見ることができる。体感的にだけでなく、視覚的にもカッ飛ばしていることがわかる。

 車重1260kgはさほどライトウェイトではないが、走っていてボディの重さを意識することはない。ハンドルの操作性は軽く、タウンスピードや駐車の際に必死にならずみすみそうだ。足は硬めだがガチガチではないので、デートにも使える。基本カッ飛び系のクルマだが、アイドリングストップ機構が付いているのには驚いた。路線バスと一緒で、クラッチペダルを踏むとエンジンは再始動。ペダルを踏んでギアを1速に入れている間にエンジンはかかるので、再始動までの時間を「遅い」と感じることはない。

 運転中ずーっと気になっていたのが、アクセルペダルとブレーキペダルの間隔の狭さだ。アクセルを踏むと靴の左端が必ずブレーキペダルに触れる。したがってアクセルを戻す際も、再びブレーキペダルに干渉する。ペダルの踏み方を変えてもどうにもならない。結局はイタリアンシューズのような細身の靴を履く以外に解決方法はないようだ。履く靴を選ばせるなんて、オシャレにうるさいイタリアのスポーツモデルならではだ。

(猪俣 恭幸)

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掲載日:2010/10/19

この記事のカテゴリ:試乗記