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第306回・豪華版メルセデスベンツ300登場

車屋四六のGood Days&Good Cars

 第二次世界大戦=WWⅡが終わってほぼ10年が経った頃の日本が外貨不足で、外国車の輸入禁止だったことについては、前回でふれた。新車を買えるのは、駐留軍人軍属とその家族、在日外交官や日本に居住権のある外国人、いわゆる第三国人達だった。

 で、彼等が2年間使ったら日本人が買える。いわば日本人にとっての新車は、まる2年を使用して3年目に入った中古車ということ。そんな車の中で、日本の財界トップ経営者、大臣高級官僚達の最高人気がキャデラックだったことも紹介した。

 ところがだ、ふと気がついたらキャデラックの人気を追い越して、100万円ほども高値で取引され、ステイタス度ではトップに躍り出ていたのがベンツ300だった。

 取引は800万円前後で推移していた。ちなみに輸入禁止になる直前、輸入業者ヤナセでの店頭価格はキャデラックと横並びの350万円だったのに、まる2年後に800万円、しかも中古車なのに。

 さて、WWⅡ中のダイムラーはドイツ軍需産業の主力だから、連合軍の猛爆で工場は壊滅的打撃を受けた。そんな廃墟を工員や役員区別無く力を合わせて片付け、瓦礫の中から使える機械を探し、修理で工場を再開した。

 そして終戦の翌年、46年には早くも乗用車生産を再開。そのベンツ170Vが戦前型だったのは戦勝国と同じである。こうして戦後の再建は着々と進んでいった。

 やがてダイムラーベンツは、満を持して51年開催のフランクフルト自動車ショーに戦後の新型車を登場させる。展示ブースには誰もが目を見張る豪華なメルセデス300が鎮座していた。

 比較するのもおかしな話だが、同年日本に登場の新型車と云えば、トヨペットスーパー、ダイハツ三輪乗用車ビー、ノックダウン車の三菱ヘンリーJなど。もっとも、日本から木炭車が消えたのも同じ年だったから、日本のレベルは推して知るべしだった。

 300の諸元は、全長4950㎜、全幅1838㎜、ホイールベース3050㎜。堂々たるフルサイズカーだが、車重1770kgは、さすがドイツの技術、意外に軽量と感心したものである。

 が、敗戦国ということもあり、短期間で大排気量エンジンの開発は無理だったようで、ズー体からは不似合いな3Lエンジンに不安を感じた。直六OHC、正確には2996cc、ソレックススキャブレターを二連装しても115馬力でしかなかった。

 が「何だ115馬力」と馬鹿にする必要はなかった。M168型エンジンに一鞭あてれば、最高速度は160粁に到達する。ゼロ400加速でも18秒台というのだから、やはりベンツは凄いと思った。

 私の工場に修理に来たエンジンを整備したときに見ると、常識ではシリンダーブロック上面は水平なのに、こいつは30度ほど傾斜しおり、ピストン頂部もそれに合わせて盛り上がり、OHCなのにブロック側面にスパークプラグがネジ込まれていた。

 戦後の新作300セダン(ドイツ語でリムジーネ)は評判も良く、54年には300B(135馬力)に進化、更に300C登場時には自動変速機も搭載する。

 日本では天皇家も購入、ローマ法王をはじめ、王侯貴族、各国大統領元首の公式乗用車として活躍、金持ち有名人、大物芸能人などにも愛されたのである。

 57年のフルモデルチェンジでは、アメリカの流行に習いハードトップに進化する。それは生半可なものではなく、四枚のガラスばかりでなく、三角窓だけ残して、あとは両サイド素通しになるという徹底したものだった。

 同時に、カブリオレは引退するが、セダンは更に発展を続けエンジン出力も向上する。が、続きはまたの機会に。

 300が登場した51年は昭和26年。戦後6年が経ったが日本経済は、まだ貧乏丸出しで、国民一丸となって復興に立ち向かっていた。NHKの第一、第二放送だけの放送も、民間放送解禁で六局が誕生、TVの実験放送も始まった。

 で、CM放送も始まり日本にPR時代の幕が開く。NHKではラジオ体操復活、大晦日の紅白歌合戦登場。食料配給公団が廃止されても食べ物が豊かになるわけではない、そんな時代だった。



(写真1)1951年型メルセデスベンツ300:終戦から僅か6年目、しかも敗戦国でこれだけ貫禄の乗用車を開発する底力と高度な技術力は日本とは雲泥の差だった。

(写真2)300型カブリオレは閉めればセダンと変わらぬ内装で寒暖差に強くオープン時には各国首脳のパレードなどに愛用された。折りたたまれたランドージョイントが見える。

(写真3)二代目300はアメリカで流行のハードトップに進化するが三角窓以外は片側6枚の全ガラスが開放されて―柱無しが大きな特徴だった。

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掲載日:2014/09/03

この記事のカテゴリ:連載・クルマ昔話